とにかく早く高校を卒業して、さっさと家を出たかった。




日曜日。



もうずっと、イライラが治まらない。

明子はそれを、こんな商店街の所為だと思い、とりあえず違う空気を吸いたくて、昼過ぎに散歩に出掛けた。


無意味に駅裏まで歩き続け、疲れたので休憩しようと、近くに見つけた公園に入った時、



「……あ」


咥え煙草でベンチに座り、宙を仰いで煙を吐き出すレイジを見つけて、驚いた。


こんなところで何をやっているのだろう。

っていうか、レイジくんって煙草吸うの?



「あれ? あきちゃん、奇遇だね」


レイジも明子に気付き、笑みを向けてくれた。

明子はレイジの元へと歩を進めた。



「レイジくん、今日、仕事休みなの? 家、この近くなの? 何やってるの?」


頭に浮かんだ疑問符をそのままぶつけた明子。

レイジは相変わらず笑ったままで、



「天気いいから、ひなたぼっこしてんの」


とだけ。



レイジから吐き出された煙が、抜けるような青い空に溶ける。

明子は胸が締め付けられるような思いだった。


レイジは短くなった煙草をコーヒーの缶の中に落とし、



「あきちゃんは何やってるの?」

「散歩」

「いいね、散歩。健康になれそうだ」