明子の恋心は、告白する前に玉砕したのだ。

いよいよもう、古臭い商店街の中にある実家に帰ることすら嫌になった。


明子はそれまで以上に派手になり、それまで以上に夜遊びを繰り返すようになった。


しかし、それに怒ったのは母だった。

寛容な父とは違い、母は明子を犯罪者でも咎めるような口ぶりで、



「あんた、毎日毎日、いい加減にしなさいよ!」


と、毎日毎日、怒鳴っていた。

明子はそれに対し、いつも「放っといて」の一言で片づける。


しかし、今日の母はそれでは引かなかった。



「話があるの。座りなさい」


得意のお説教が始まるのだろうと察した明子は、舌打ちする。



「嫌。これから友達と約束あるんだから、どいて」

「いいから座りなさい!」


一喝され、さすがの明子もびくりとした。

が、ここで負けるわけにはいかない。



「何よ」


睨む明子に、母はため息を吐き、



「あんた最近一体、どうしちゃったの? 何か不満でもあるっていうの?」

「……不満?」

「言いたいことがあるなら言いなさい」


何でわかんないの?

そこで一気に怒りに襲われた明子は、



「あたしは何もかもが不満なんだよ!」


と、声を荒げた。