必死で言った。

レイジはまたふっと笑みをこぼし、



「俺が変わったんだとしたら、それはきっと、大切なものを見つけたからだよ」

「……大切なもの?」

「大切な人を大切にしたいと思う気持ちっていうのかな。愛ってやつ?」


少し照れたような、でも誇らしそうなその横顔。


しかし、それは、明子にとっては鈍器で殴られたような衝撃だった。

明子は目を見開き、戸惑いながら問う。



「……レイジくん、カノジョいたの?」


声が震えた。

レイジはうなづき、



「一緒に暮らしてる」


と、言った。



でも、冷静に考えてみれば、それは当然なのかもしれない。

そもそも、こんないい人にカノジョがいないわけがない。


なのに、あたしは舞い上がって、そんなことにすら気付けずにいたなんて、ただの馬鹿じゃない。



「ごめん。あたしもう帰らなきゃいけないから」


レイジの顔が見られないまま、明子は立ち上がった。


泣きそうだった。

歯を食いしばることでやっとだったのだ。



「じゃあね、レイジくん」


特に引き留められるようなこともないまま、明子はそのまま走って公園を出た。