――…上手く、"友達"の線引き出来たよね?
バタバタバス停まで走りながら、誰も居ない薄暗い夜道に心で答えの無い問いをポツン…と溢す。
途中、足が縺れて転びそうになるが、
何とか転ばないように踏ん張って。
必死に地面を蹴る。
校舎は既に、見えなくなった。
ハァハァとバス停に何とか間に合い、
バスに乗り込む。
運が良いのか、この時間のバスに乗る人は一人も居らず、汗だくな私を怪訝そうに見る人は誰も居なかった。
ホッ…と、バスの座席に座りながら、
安堵の溜め息を零す。
ふっ…と、バスの乗り口に目をやっても誰も乗る人は居ない。
乗る人が居ないのを確認した運転手は、
乗り口のドアを閉めてバスを発車した。
手に持つリュックを座席に乗せながら、ぼんやりと窓の奥に広がる景色を見詰める。
流れるように変わっていく景色。
暗闇に近付いていく外を照らすのは、
車のライトや建物、家々の灯り。
…きっと、今頃あの二人は、楽しそうに話しながらバス停までの道のりを歩いているかな…?
それとも彼女の部活が終わるまで、西藤が待っているのだろうか?
アイツ、仮にも元部長だったし…。
「…なんて、私には、分かるわけないか」
だって、私は関係無い存在。
二人の事は二人にしか分からない。
当事者ではない、外部の人間に
分かるものなんて、無いんだ。
ズクッ…当たり前の現実が、
胸に突き刺さる。
彼に掴まれた腕が、
冷たく無機質に思える。
もう、あの温かい温もりは、
彼女だけに向けられているんだ。
分かってる事。
そうなって当たり前の事。
だけど、その事実が余計、
私を悲しみに落としてく。
「何が、上手くいってない…だよ」
彼女と楽しそうに話しながら
笑ってたじゃんか。
「…彼女に優しく笑って話すところ、
初めて見たなー…」
保健室での彼に強く抱き締められた
温もりを思い出す。
「…"友達"の線引きって、
結構きつく来るなー…」
でも、その痛みが、
私を彼を制するただ一つの方法。
線引きするから、自分達の関係をハッキリと見せて自制させる事が出来る。
君にどうしたって近付けない、
そう、自分に知らしめる事が出来るんだ。