キュッと西藤の腕に抱き付く彼女に苦笑を零しつつ、素直に感情を表す彼女につくづく自分とは全く違うと再確認。


「こいつとは何もないよ。亜美…名瀬(ナゼ)の代わりに相談に乗ってただけだしね?」


ニヤリ、西藤の顔を見る。


「名瀬先輩の変わりに…?
先輩、そうなんですか…?」


「…うん、まぁ」


西藤は私の突然の変わり様に、
困惑しつつも話を合わせる。


亜美の名が出て、西藤の同意の言葉に
納得の表情を浮かべる彼女。


…先輩後輩関係無く人気があって、生徒会長を務める亜美の名は本当に絶大だな。


そう、心の中で感心しながらも。


後で亜美に話し合わせてもらう連絡と勝手に名前出したの謝っとかないとな…。


頭の端でそんなことを考えつつ、
ハァ…と小さく溜め息を零す。



「あの…」


「ん?」



急に彼女が遠慮がちに私を呼んだ。

どうしたの?と彼女に視線を合わせながら、優しく問う。


優しく言ったのは、仮にもこの子、初対面出し後輩だから。



「その…」


「うん」


「…名瀬先輩とも知り合い何ですか?
名瀬先輩の変わりに相談乗ってたって事は…」



そこですか。


てっきり、何の相談に乗ってたかとか聞かれると思ってたから、


予想外の質問にフハッ…と
本の少し、笑みが零れ落ちた。


そんな私に、きょとんとする彼女。

西藤は静かに私を見る。



「ううん、何でもないよ。うん、名瀬とは知り合いというよりは親友かな」


「え!そうなんですか!?」


驚いたように声を上げる彼女。
それに驚く私。あ、亜美のファンなのか?


「という事は、名瀬先輩の…」


「――…バス、大丈夫なのか?」


食い付く彼女の言葉を
被せて制する西藤の静かな声。


西藤は、いつの間に出したのか。


スマホに視線を落としながら、「バス来るまで、あと20分もないけど」と淡々と話す。


それに対して私は。


「……え?うそっ!!もうそんな時間!?」


さー…と血の気が引いた。


因みに、バス停までは
歩いて15分程かかる。


ギリギリで間に合うか
間に合わないかの瀬戸際状態。


私は大慌てで玄関に向かおうとしたが、
一度、西藤と彼女に視線を向け。


「じゃあね、二人とも!夜道に気を付けてね!!えーと、彼女ちゃん!」


「え?は、はい!」


「亜美の話し、途中で終わらせてごめんね!また、機会あったら続き話そう。亜美の面白い話し、してあげるから」


「え!良いんですか!?
あ、でも、名瀬先輩に怒られません?」


「うん。あはは、それはないと思うよ」


「…じゃあ、宜しくお願いします。
名瀬先輩のお話、楽しみにしています」


ペコリと頭を下げながら、
嬉しそうに笑う彼女。


私は、そんな彼女に「了ー解!」と笑って、玄関へと急いだ。



――…背中で感じた、
西藤の視線を振り切るように。