グイッと西藤の胸に手を添え体を押す。
「…何、急に。
質問の答えになってないけど」
私の予想外な行動と言葉に驚きを隠せないと言うように、困惑の色を含ませる言葉を落とす西藤。
……いつも、こうなると大抵私は流されるもんね。学校では、こう言うことなかったから一切流される事もなかったけど。
「…奈央…、
話しを反らさずにちゃんと答えろ」
少し、強くなった彼の口調。
だけど、瞳は怖さを含んでいない。
「…泣いてなんかいないよ」
今度は詰まる事なく、答える。
本当は逆なのにね…。
敢えて事実を伏せて、
真っ直ぐに彼を見返す。
暫く私を視線を交えていた西藤だが。
ハァ…と短く溜め息をついたかと思えば、
少しだけ私と距離を取った。
でも、体を退いたわけではないから、
私は西藤に押し倒されたまま。
そっと、優しく私の頬を撫でながら
西藤は静かに言葉を落とす。
「…彼女とは、大丈夫だろ。実質もう、上手く行ってないし多分別れるな、あれは」
まるで、他人事のように話す彼。
顔も至って真顔で、
なんて事ないように思うが。
私は知っている。
そういう時こそ、
西藤は強がっているんだと。
真顔で本心を隠すのが得意な彼は、
きっと今、苦しいんだ。
―――…嗚呼、何だ。
そう言う事か。
今、分かった。
彼がなぜ、急に
保健室に来るなんて言ったのか。
何で今、私から完全に離れないのか。
実際に、保健室に会いに来て、
こうやって干渉してくるなんて。
普段の西藤なら、有り得ない事なのに
そう考えれば答えなんて簡単で。
辻褄が嫌でも合ってしまう。