すっとんきょんな声が出た。
とても間抜けな、返事。


顔なんて、視線ごと上がり、
ぽかーんとしている。


「え?じゃなくて、
お前、泣いてたの?」


復唱するようにもう一度言葉を紡ぐ、
西藤のハッキリした声。


真っ直ぐな黒眼が
逸らす事なく私を射抜く。


「な、泣いてなんか」


ないよ。


そう言いたいのに、
思いの外言葉は詰まる。


歯切れ悪いのも、
心当たりあるからで。


先程、苦しい想いと現実の重さに泣きそうになっていた自分。


ちゃんと落ち着けたと思っていた、のに。



「…何で、そう思うの?」



ヘラリ、浮かべた笑顔は
焦りを隠せているのか。


分からないが、西藤はやけに真剣で真っ直ぐな黒眼を私に向ける。


真顔に戻った彼の瞳に映る私は、
怯えているように見えた。




―――泣かれるの、嫌いなんだよ。




かつての彼の言葉が甦る。


ぐっ…と、
毛布をバレないように小さく握った。



「――…何で、笑うんだよ」


「…西…藤…?」



苦しいような
悲しいような



もどかしさ滲む
その言葉が聞こえたと思ったら。



西藤にトン…と、
強くない優しい強さで押された体。



それは抗う事なく、
素直にベッドに沈んでいった…。