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差出人 西藤敬

宛先 柳瀬奈央

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そっか、分かった。

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顔文字もない、簡素なメール文。



きっと、先程の私の返信に対しての返事を一つに纏めての『分かった』なんだろうけど。


ほんの少しだけ、寂しく思ってしまった自分に心底寒気を感じる。


乙女かよ。
キモい、自分。



「…でもまぁ、きっと」



『ごめん、冗談』とかの
メールが直ぐに来そうだけど。


ハァ…と浅く溜め息をつく。


スマホをベッド脇に置きながら、
ぼんやりと天井を見る。


カーテンで囲まれた周りの奥に
広がる真っ白な天井。


だけど、ある程度年季が入ってるのか、所々に染みが窺える。



「……」



何となく、手を伸ばして
掴めぬ空気を掴んでみる。


当たり前だが、
手を開けばそこには何も、




何もない。




―――嗚呼、まるで。




私の恋と、同じだ。



手をどれだけ伸ばしても。
手でどれだけ掴んでも。


手を開いてみれば、何もない。
手を開いてみれば掴めてない。



何も決して手に出来ない。