「―――…」



スッ…と椅子から立ち上がり、猫背のない
綺麗な姿勢で黒板に向かうその背中。


着崩されてない制服を身に纏いながら、
無駄のない動きでチョークを掴む



男らしい



だけど、何処か細い指先。



カツカツ、無言でチョークの文字を黒板に書きながら視線は真っ直ぐで。



自信がある、芯のある綺麗な黒い瞳。



鼻筋は通っていて、肌はどちらかというと焼けていて黒短髪の見た目スポーツマンだけど、イケメンって訳ではない。



だけど、カッコいいんだよな…。

性格に関しては
惚れた欲目無しでも良いし。



「ん、正解。流石、西藤だな。
ノートも綺麗だし、葉月も西藤を見習え」


「はーい。
じゃあ、西藤、ノート貸してくれ?」


「何で『じゃあ』なんだよ」



そう言いながらも、穏やかに笑いながらにノートを葉月という男子に貸す西藤。



……本当、優しいな。



見習え、そう言った先生が何やら黒板に書き足しながら説明しているのが視界の端に映るが。



私の視線は、“あの人”――…西藤敬(サイトウタカシ)から離せなかった……。