さっと、大慌てながらに席に着く。
ハァー…と安堵の溜め息が零れたが、私はテキスト類を置きながら左隣に顔を向けた。
「ひーちゃん、
席下ろしておいてくれてありがとう」
すると、ひーちゃんと呼ばれた人物はにこりと笑顔になり、「どいたま」と返事をしてくれた。
ひーちゃんの特徴とも言える、ふわふわの黒髪が此方に顔を向けた時に揺れる。
――ひーちゃんとは、高2の夏辺りから仲良くなった友達だ。
きっかけは、舞桜経由で知り合った。
……確か、ランチルームっていう昼食を取れる少し広めの学生食堂室で舞桜の紹介で知り合った…ような。
ぼんやりとしているが、
確かそうだ。
高3で同じクラスになり、たまたま授業科目で同じのもあり趣味も合いで、一気に仲良くなった、大切な友達。
だけどたまにひーちゃんを見ていると、チクリと小さな痛みに似た何かを感じて。
どうしようもなく、
苦しくなる。
だって、
ひーちゃんは“あの人”の―――…