こんな気持ちは知らなかった。
男がこんなに愛しいと思えるなんて。

彼にハマったのは、私のほうだった。

彼の繊細な指先が、私の黒髪を撫で、ほんのり桃色に染まった肌の上を滑る。
熱い吐息が、首筋にかかり、赤い印が刻まれる。

2人で一緒に熱くなって、溶けあうかのようにその身を重ねあった。

それから一週間、彼は毎日私の元に通ってくれた。

愛される喜び。
幸せというのは、きっとこういうことを言うんだと確信した。


でも、それは全て私の勘違いだった。
私を後ろから抱きしめ、優しく髪を撫でる彼が眠りに落ちる直前に呟いた名前は、すっかり幸せに浸っていた私の目を覚ました。

「・・・シーファ・・・」

彼が抱いていたのは、私じゃない。
他の女を・・・きっと、黒く長い髪をしたその女を想って・・・同じ黒髪の私を抱いていた。

さっきまで居心地の良かった腕の中が、一気に氷のように冷たく感じた。