電車を降りた私は、真っ直ぐにピアノ教室に向かう。
ピアノがあるのは、火、木、金、日曜日。
日曜日はソルフェージュなので、普段のピアノとは先生が違う。
その先生は、いつも教えてくれている先生の旦那さんで、普段はどこかの音大の講師をしていると聞いたことがある。
私はピアノ教室の先生の家の前で立ち止まると、うっかり昨日練習するのを忘れてしまった事を思い出した。
でも、仕方ない。
私は怒られるのを覚悟で、先生の家のチャイムを鳴らした。
「こんにちは。」
「お帰りなさい、アンナ。さぁ入って。」
玄関を開けた先生に挨拶をすると、先生は直ぐに私を家に迎えてくれた。
先生はわりと小柄で優しそうな雰囲気と、上品な雰囲気を併せ持っている。
初めて会った時から、その雰囲気は変わらなくて、きっと育ちが良いんだろうと直感的にそう感じた。
普段のおっとりとした雰囲気と、練習中の厳しい対応にすごくギャップを感じるけれど、私はなんだかんだ言ってもこの先生が好きだった。
厳しいけれど、結果を残す。
それがこの先生を尊敬出来ることに充分値すると思うからだ。