それが例え他人に否定されるとしても、私には他に選択肢はない。

それに正直なところ、そんな事をされ続けていても、私はシオンを嫌いになることはない。

むしろ何でも完璧にこなすシオンは充分過ぎるほど尊敬に値するし、そんな人を拒否するほど、私には価値なんてこれっぽっちもない。

例えそれが間違った事だとしても、求められるならそれに応えるのが、唯一自分に出来る事。

それが今の私に出来る唯一の恩返しなのだから。



バスルームの洗面台の前で、自分の身体を見つめる。


痩せて魅力もない貧相な身体を見て、思わず盛大に溜め息を吐きたくなる。

少なくとも異国の血が入っているはずなのに、なぜか身体だけは母親譲りなんだろう。

記憶の底にある、母親の姿を思い出し、一瞬とても気分が悪くなった。

痩せ細って、いつもやつれていた母。
蛇のような鋭い目付きで、いつも私を睨んでた。

途端に動悸が激しくなる。


私は記憶を振り払うように、そのままバスルームに入ってシャワーを出した。

水が流れ落ちるように、この記憶も流れて消えてしまえばいい、と心から願った。