「よし、じゃあそろそろ行くか?」

時刻は3時を少し過ぎたくらいだったので、今から帰ればちょうどピアノの時間だ。
私はゴミを持ち帰ろうとしたけれど、和也はそれを阻止した。

「ゴミぐらい、ちゃんと棄てるよ。」

少しだけ申し訳なく思ったけれど、何より和也の家なので、お言葉に甘えることにした。


「お邪魔しました。」

誰も居ないのは分かっていたけれど、玄関で一応そう言っておいた。
和也はそんな私を相変わらず、優しい瞳で見守ってた。

なんだか、とても楽しい1日だった。
学校をサボることは、あまり良くないことだけれど、なぜだか学校に行くよりも充実した1日だったのは間違いない。


二人で歩く駅までの道のりは、相変わらずすごく短い。
和也はまた私の手を掴まえて、私達は手を繋いで歩いた。

朝はなぜ、途中から手を繋いだのか疑問に思ったけれど、その答えを聞いてないのに、和也は教えてくれた。

「まだ彼女になってくれるか分からなかったから。他人に見られたら変な噂たつだろうし、でももう彼女だから、堂々と出来るな。」

そう言って優しく私の手を握る和也に、なんだか少しだけ嬉しく感じる。

彼女と言う慣れない響きが、なんだかとっても恥ずかしいような嬉しいような、複雑な気分にさせられた。