凛が帰ってしまうと、和也は支度をすると言って部屋を出て行った。
私はぐしゃぐしゃになってしまったベッドを綺麗に片付けて、お菓子のゴミなんかを全部まとめてたり、適当に整理したりしておいた。
それは私の癖みたいなもので、散らかっている空間は何故か幼い頃住んでいたボロアパートを連想させるので、落ち着かなくなるのだ。
潔癖なわけではないけれど、ついつい片付けたくなる。
「なんか、すげー綺麗になってるし。」
和也は戻ってくると、部屋を見てそう言った。
「ごめんね、掃除機とかかけたいんだけど、見当たらなかったから。」
「は?いいよそんなことしないで。」
「でも・・・。」
「かなうひょっとして綺麗好きなの?」
「ううん、別にそういうわけじゃないんだけど。」
「凛なんか家来ても片付けて帰ったことねぇよw」
「・・・そうなの?」
「うん、いつも汚して帰ってくぜ。」
和也はそう言って、徐に制服の上着を脱いで着替え始めた。
私は一瞬ビックリしたけれど、なぜか恥ずかしくなって顔を背けた。
視線を逸らせてはいるけれど、何だかドキドキする。
だけれど、和也はそんなこと気にもしないでさっさと着替えを済まして、壁に掛けたバッグを手に取ると、タオルなんかを詰め込み始めた。
きっと、ダンススクール用のバッグなんだろうと思った。