だけれど不思議なもので、しばらくそうやって後ろから抱き締められていると、恥ずかしいよりもその体温の心地よさが勝ってくる。

「なんかすげー、かなういい匂いするんだけど。」

「ん?」

「香水つけてる?」

「・・・つけてないよ。」


私は自分がどんな匂いがするのか分からなかった。
でもママの香りを思い出し、柑橘系のあの石鹸の香りのことかと思った。

「多分、ボディシャンプーの匂いかも。」

「そうなの?」

そう言って私の首元に顔を埋めた。
なんだか背筋がぞくりとしたけれど、不思議と不快感はなかった。


「この匂い・・・いいな。俺も同じの買いたい。なんてやつ?」

「なんだっけ?・・・見てくるね。」

「うん、お願い。」


和也はそう言うと、ようやく私から顔を離した。


「凛起きないね?」

「あぁ、まぁほっといていいよ。」

「そうなの?」

「夕方にはさすがに起きるだろうし。」

「そうなんだ。」

「それに、起きてるとうるせぇしw」

「・・・。」

和也はそう言って笑った。

表情は分からないけれど、ぴったりと密着した身体から笑っているのが微かに伝わってくる。

なんだかそれにつられて、突然可笑しくなった私は思わずクスクスと笑い出した。