何よりも驚いたのは、玄関のチャイムすら鳴っていないのに、部屋の扉がバーンと音を立てて開いた事だった。
私はびっくりして、思わずベッドから転げ落ちそうになった。
だけれど和也はその瞬間を見逃さずに、私の腕を掴んで元に戻した。
「いきなり過ぎるだろ、ノックくらいしろ。」
和也はそう言いながらも、たいして気にしていない様子だった。
私は突如現れた凛に視線を移すと、凛は見たことがないくらい怒っているのが分かった。
「マジ、ふざけんな。何勝手にかなうにちょっかい出してるわけ!?」
凛はそう言って、和也のところまで歩いていってその胸倉を掴んだ。
「落ち着けって。」
「は!?落ち着いてるわ。てめぇの頭は幼稚園児かよ!?」
凛はそう言って更に和也に詰め寄った。
自分よりずっと大きな和也に詰め寄る凛のオーラはすさまじく、普段声を上げて怒ることのない凛のその行動に、私はあまりの怖さに心臓が嫌な音を立てて脈打つのが分かった。
次第に呼吸が荒くなり、パニックを起こす。
やめて・・・
やめてやめて・・・
私は両耳を押さえて頭を抱えた。
お母さんの金切り声、罵倒する声、叫び声、沢山の声が聞きたくもないのに私の耳に響く。