何だか和也に流されて、こういう風になってしまったけれど、正直私にとって和也よりも凛の方が大事だった。

そんなことは今更言えないけれど、もし凛が私と和也のことに反対したら、私は間違いなく凛と一緒に居る事を選んでしまうと思う。

目を閉じた私の頬を優しく撫でる和也の掌から伝わる体温を感じながら、私はそんなことを考えていた。


和也は相変わらず額をくっつけたままだったけれど、目を閉じて俯く私には和也がどんな表情をしているのか分からなかった。

時折優しく私の頬を親指で撫でるだけで、もう唇が重なることはなかった。

和也も色々と、考えているのかもしれない。

それからしばらくして、私はゆっくりと目を開いた。
途端に、目の前に映る和也の瞳とばっちりと目が合う。


「・・・ねぇ、凛に会いたい。」

私は静かにそう言った。
何だかとても、凛の傍に居たいと思った。


和也が私と一緒に居たい、といった言葉の意味がなんとなく理解出来た。

それは恋愛感情ではないけれど、傷を負った凛の傍に居たいと切実に感じた。

私の言葉に和也は一瞬戸惑った表情を浮かべたけれど、そっと私から離れると、ポケットから携帯を取り出した。


「凛に電話してみる。」


そう言って、携帯を耳に当てた。