「……幻滅した?」


和也はそう言って、私の腰に添えた手に一瞬力を込めた。

正直、私にとっては和也の事よりも、凛の事の方がよっぽど気掛かりだったので、黙って首を振る。


「俺さ、本当はかなうに惚れたら駄目だって思ったんだ。凛の事もあるし、また怒られそうだしな。」


和也はそう言って溜め息を吐く。


「だけどかなうに会って、どうしてもかなうと一緒に居たいって、凛には悪いけど諦めきれなかった。」


和也はそう言うと、ほんの少しだけ身体を私の方へ向けると、覗き込むように私の視線を捉えた。


「ごめん。」


和也は静かにそう言って、私の顎にそっと手を添えた。



次の瞬間……。

私の唇に、そっと和也の唇が触れた。
今まで触れた事のない人のその感触に、私は一瞬頭の中が真っ白になった。


それは本当に一瞬で、私は目を閉じる時間すらなかった。

唇は離れたけれど、和也は私の額に自分の額をくっつけたまま、静かにこう言った。


「俺からちゃんと凛に話して、怒られてくるよ。」


近すぎる距離で、囁かれたその言葉に、私は遅れて目を閉じた。

何だかとっても、複雑な気分だった。