「まったく。あんたが勘違いさせるようなこと言うから!」


ママはそう言ってもう一度レオンの頭を叩くと、キッチンに入っていった。

私は何だかとても怖かった。

普段感情を出すことがあまりないシオンが、あんなにも冷たい声を出すことに驚いたのももちろんあったけれど、それよりも感じたのは・・・


シオンが本気で怒っているような、そんな気がしたからだった。

私はそんな気まずい空気に耐え切れなくなって「支度してくるね」と、ママに伝えてリビングを出た。


逃げるように早足で自分の部屋に向かう。


シオンは何で怒ったのか理解出来なかったし、そもそもあれは怒っていたのかすら分からないけれど、機嫌が悪いのは誰の目にも明らかだった。


私は長い髪を梳かしながら、シオンが何故あんな風な態度をとったのか考えた。

いつもレオンが私に対してちょっかいを出したりしても、何の反応も示さないのに。

何がシオンの気に触ったのか、私には分からなかった。

ただ1つ確かなのは、自分があんな風にシオンの気に触ることをしないように気をつけようと思う事だ。

あんな声で怒られたら、私はきっと恐怖でおかしくなってしまう。