なんとも言えない感情が、心の中を支配する。
どうして今更、あの女の人を思い出すのか意味が分からなかったし、何よりも自分の心の中がおかしい。
誰かがどす黒い液体を、私の心の中にぶちまけたような、そんな気分だった。
もうすっかり食事をする気も失せてしまった私は、テーブルに肘を着いて考える。
私の心が乱れている原因は、間違いなくシオンだ。
それはちゃんと分かってる。
普段だったら、気にもしないこと。
現に、私はあの時シオンと一緒に居た女の人を見た時、特に何も気にならなかった。
彼女なのかと思ったし、ただ綺麗な人だと思った事も事実で、それだけのこと。
彼女なら、家に訪ねて来たって何もおかしなことなんかない。
今までだって、シオンやレオンの友達が家に来る事はあったし、そういう日は私は大体部屋に篭って居た。
だから、ひょっとしたら、今までだってあの女の人は家に来ていたのかもしれない。
今日だって、本当はデートの約束があったのかもしれないし、だったら家に訪ねて来たって何もおかしいことはない。