・・・・・・・・・―――――。





「わ・・・・わたしは・・・・にんぎょう・・・・じゃない・・・よ。」


私がそう言うと、その男の子は私の隣に置かれたベンチに座った。

足をぶらぶらとさせながら、私達はその雲一つない青い空を見上げてた。


その男の子は私に沢山の質問をしてきた。


だけれど、私は上手く話をすることが出来なかった。

それでもその子は、ゆっくりと時間を掛けて私から言葉を引き出した。


その子はずっと私の隣に座って、その綺麗な蒼い瞳で私を見つめていた。




「・・・・・それで君は怖かったの?」

「・・・・うん。」

「・・・・・痛かったの?」

「・・・・・うん。」



私がそう言うと、男の子はベンチから立ち上がり、私の目の前に立った。

また太陽を背に立った男の子が眩しくて、私は目を細めた。


「もう、大丈夫だよ。」


男の子はそう言って、片方の口角を上げて笑った。


「君の痛いの、僕がもらってあげる。」


そう呟いた瞬間・・・


その子はポケットから取り出した小さなカッターナイフで、自分の小さな掌を切った。

スッと音が聞こえてきそうなくらい深く。


その傷口からは途端に血が零れ落ちる。


綺麗な掌から流れ落ちる鮮血が、私の視界を紅く染めた。