「・・・本当に体力ねぇな。」


シオンは呆れたように小声でそう言った。

ごめんなさい、と言いたかったけれど、やっぱり言葉が出てこない。

どうやら、私は倒れたらしい。
この見慣れた部屋はどう見ても私の部屋だったので、なんとなくそんな気はしていたけれど、部屋を出た辺りで私の記憶はなかったから、きっと運んできてくれたんだろうと思った。


暫くすると、ママは氷枕を持ってやってきた。
シオンはそれを受け取るとゆっくりと私の頭を持ち上げて、その下に氷枕を置いてくれる。
冷たい枕に一瞬身震いしたけれど、それはズキズキ痛む私の頭を徐々に冷ましていった。


「本当に大丈夫かしら?」

「ただの風邪だろ?夕方までに熱下がんなきゃ病院だな。」

「そうね。」

私は目を閉じたまま、うつらうつらとママとシオンの会話を聞いていた。

だけど次の瞬間、私はママの言葉ではっとした。
頭は朦朧としているけれど、何故か思考ははっきりとしてきた。


「あぁ!大変!!」

「・・?」

「私、今日出かけなきゃ行けなかったんだわ。」

「・・・・保健証だけ置いてって。」

「シオン、学校は?」

「別に休んだって問題ない。」

「まぁ、そうね。レオンと違って優秀だものね。」

「・・・・。」

「じゃあ、お願いしていい?何かあったら直ぐ連絡して。」

「・・・あぁ。」


ママ・・・行かないで。


「夕方に一回様子を見に来るわ。」


行かないで。
どうやら私の必死の訴えは、ママには届かなかった。