「アンナの前でなんて事言うの!!」

「いてぇ。」


ママに叩かれた頭を擦りながらレオンが呻いた。

「殴ることないだろ、アンナだってもう中2だぜ、子供って年齢じゃねぇじゃねぇか。」

「だまらっしゃい。」

ママはそう言って、もう一度手を振り上げる。
レオンはさらっとそれをかわして、ママの手首を掴む。
ママはそれでも全く怯むことなく、咄嗟に捕まれた腕を振り払った。


「分かったから、殴るなよ。」

レオンはそう言って、不適に笑う。
ママはキッとレオンを一瞥すると、イライラとタバコに火をつける。


私達がまだ小さかった頃は、いつも悪ふざけが過ぎるレオンはよくママを怒らせて、叱られてはごめんなさいと謝っていた。

それが今ではこうして冗談混じりにママと言い争いをしたり、ママの手を楽々と掴んだその仕草に、時間の流れをすごく感じた。

私達はレオンの言う通り、もう子供じゃない。

法律ではまだ子供として保護されるべき存在だけれど、もう自分できちんと考えて行動することが出来るし、ママには言えないけれど私もレオンやシオンと同じように、人並みに色々な知識はある。

それは全てシオンに教わったことだけれど、それを言う勇気はさすがに持ち合わせていなかったので、私は二人の会話を聞きながら食器棚の整理を始めた。