どのくらいそうしていたのか分からない。

私はただ、夢中で鍵盤を弾き続けた。


呼吸が段々と荒くなっていくのがわかる。

指先が勝手に動き回って、次から次へと浮かぶ音色を確実に繋げ合わせた。

頭の中は、人の心を想像し、沢山の物語を繰り返し、そのイメージを膨らませる。

何かに取り憑かれたかのように、私はピアノを弾き続けた。






そして最後の一章節を弾いた瞬間。

私は指先に感覚が戻ってきたのを感じた。



最後に弾いた音が、部屋中に響き渡っていた。