その本は私に色々な事を教えてくれた。
私はまず最初に、発表会で弾くベートーヴェンの三大ピアノソナタについて詳しく本を読み進めた。
作曲した人の気持ちになって演奏をする。
その為には、その人の生涯や、環境などを詳しく知っておく必要がある。
私はベートーヴェンという人の生涯を夢中になって読んだ。
それは時におかしく、時に悲しく、そして時にとても優しく感じられる魅力的な内容だった。
そして沢山の素敵な曲をなぜ後世まで残すことが出来たのかを、私はとても分かりやすく理解することが出来た。
私は本を閉じてピアノの上に置くと、ピアノの鍵盤蓋をゆっくりと押し上げた。
楽譜は出さなかった。
ベートーヴェンの気持ちになって、演奏してみたかったからだ。