「なんで電話しない?」
「え?」
頭の上から聞こえてきたシオンの言葉に、思わず顔を上げた。
視線が合うと、シオンはやっぱり怒っているのか、その形のいい目を細めて私を見ている。
「荷物が重いなら、電話すれば良かっただろ?お前は何のために携帯持ち歩いてるんだ?」
そう言われてはっとした。
小学校の頃から持たされている私の携帯。
それは毎年ママによって最新型に買い換えられ続けている。
機械にも疎い私には、それはほとんど音楽を聴くためだけに持ち歩いているといっても過言じゃない。
帰りが遅くなったり、何かあれば必ずママかシオンかレオンに連絡を入れるようにと、何度も言われていたはずなのに、私はそんなことすらすっかり忘れていた。
それに電話をすることが、私はどうも苦手だ。
だって相手が何をしているのか分からないからだ。
空気の読めない私は、最悪のタイミングで電話をしてしまう可能性もあると考えると、どうしても自分から電話をすることが出来ない。
友達でも沢山いれば、いつも携帯を気にしたりするんだろうけれど、私の携帯はいつも鞄の奥底に眠っている。
「・・・・・ごめんなさい。」
なんだか色々な事に頭が回らない自分が、ほんとに情けなかった。