「本を取られたの。返してって言ったんだけど、返してくれなくて、それでね・・・・。」

私がそこまで言うと、シオンは飽きれたように溜息を吐く。

「待て、何であんな所にいたんだ?そこから説明しろ。」

「あのね、本を買ったの。それがすごい重たくて。」

「・・・・・で?」

「近道しようと思ったの。」

「・・・・。」

「急いで帰れば大丈夫と思ったの。」

「・・・・分かった。」


シオンはそう言って、本をパタンと閉じた。

そして立ち上がると、私の目の前にやってきた。


私は相変わらず俯いていたけれど、ゆっくり視線だけを上げる。

だけれど背の高いシオンの胸の辺りまでしか見えなくて、顔が見えない事に少し安心する。


きっとシオンは飽きれたような顔をしているに違いない。