私は自分の部屋に向かうと、その扉が微かに開いている事に気がついた。
どうやらシオンは私に考える時間をくれるほど、優しくはないようだ。

ゆっくりとドアを開けると、そこにはやっぱりシオンの姿があって、ソファに座って私が買ってきた本をパラパラと捲ってた。

私は何て声を掛けるべきか分からなかったので、とりあえず無言で鞄を机に置いて制服のブレザーを椅子にかけて、マフラーを外した。


「・・・・それで?」


外したマフラーを畳んで、机に置こうと思った瞬間、背後からシオンの冷めた抑揚のない声が聞こえてきた。
私はドキッとして咄嗟にマフラーを握り締めた。


「それでお前は何してたんだ?」


「・・・・・。」


どう言ったら良いのか頭で考える。
頭の中には伝えたいことがきちんとあるのに、どうしたら伝わるか整理する。


私はマフラーを握り締めたまま振り返って、シオンを見た。


「あのね・・・・本をね。」


シオンはその本を開いて膝に乗せて、片手をソファの後ろに回して身体をこちらに向けている。
その複雑な表情からは、シオンが何を考えているのか読み取れなかった。