なにも言えなかった。

うん。とも、無理だよ。とも。

そんな自分が情けなくて仕方がなかったけど、やっぱり口が動いてくれなくて。

そんなにもこのーー汚い下心はあたしの中で強く渦巻いているんだと、自己嫌悪もした。

ただ、うん。



って、いいよ、付き合おう。って言うことができない別の理由もある。

それを誰にも言えないことが、苦しい。

それだけ薄っぺらい関係しか築いてきていないから。


時間とって悪かったって一言を残して行った桐谷くん。

微かに、唇を噛んだ。










翌日。

体も、気分も重かった。
昨日に引き続き低気圧だって言うのもあるけど。


原因は、やっぱり。
昨日の出来事。


「藍酷いよねぇ、あんなに遥と仲良かったのにさ!」

「…」

「たまに何考えてるかわかんない時あったしね」

「知らない内にモーションかけてたんじゃない?」

「あ!この間藍と桐谷くんが話してるのみたよ」


何で、どうして。
そう思っても仕方が無いことは分かってるんだけど。

やっぱりそう思わずにはいられなくて。