〜奈々美side〜

教室のベランダに出て、空を眺める。
直人と別れても、清々しさも特に感じなかった。

「もう殴らない」
「好き」「愛してる」

直人の口から何度聞いただろう。
愛してくれていたのかもしれない、愛の形が歪んでいただけかもしれないが
男の言葉は信用できないなって思った。

雅紀「奈々美。」
後ろの窓から顔を出して雅紀が話しかけてきた。

『どうしたの?雅紀』
雅紀「今日塾あるの?」
『今日はないよ。』
雅紀「今日さ、部活オフなんだ。一緒に帰らない?」

『ん、いいよ。』

高校に入ってから、雅紀はたまに誘ってくる。でも直人がいたから断ってきた。

雅紀「ほんと!?よかった。先帰らないでね。」

『はーい。』
返事をして、また空を眺める。
なにか見られてる気がして、渡り廊下の方を見てみたけど、何人かいて、よくわからなかった。