ピンポーン!


家中にインターホンの音が鳴り響く。
…もう来たの!?



「美稀、急ぎなさいよ?」

「うん!パン持ってくね!」



あたしは、お皿の上にのった焼きたての食パンを口にくわえて玄関へ急いだ。



「美稀!行儀悪いわよ!」

「ごめんなさい!明日はちゃんと食べるから!!」

「…もう、今日だけよ」



お母さんは呆れた顔であたしを見る。
…ごめんなさーい。
…それにしても、いつもより来るのが早くない?
そう思いながら、ローファーを履く。



「いってきまーす!」

「いってらっしゃい」


そう言って、ドアを開けた。

春の匂いがした。
あたしの好きな匂い。
風があたしを優しく撫でた。



「…おせぇよ!」



家の表札にもたれかかっていたあの人が、あたしに声をかけた。

あたしは、その人の顔が見えて嬉しくなった。
…いつもと変わらない光景。

あたしたちは、いつも一緒……