「…こっち、来いよ」

「…え?」



紘はあたしに手招きした。
…予想外だった。
いつもの紘だったら、そんなこと言わないのに…
でも、あたしは紘に近づいた。
身体が触れるぐらい。
ドキドキした。



すると、紘はあたしの肩を抱き寄せた。
密着するぐらいに。
紘の胸の中に埋もれてしまった。
でも、それが優しくて心地良かった。
…紘の匂いがした。
紘の匂い、好きかも。
…って、あたし変態!?



「…まだ寒いか?」

「ううん。あったかい」


なんでだろう?
このままずっといたいと思うのは何故だろう?


この時はまだ気付いていなかった。
あたしの本当の気持ちを。

なんとも思っていなかったなんて、嘘だということを……