お弁当も食べ終わり、まだ時間があったから暫くの間屋上にいることにした。

紘を見ると、食べたばかりなのにもう寝転がってる。
…もう、ほんと寝るの好きだよね。



「紘、食べて直ぐ寝るのはよくないよ?」

「お袋みたいなこと言うなよ」

「ふふっ。よくお母さんに怒られてたもんね」

「うっせ!」



段々、風が強くなってきた。
髪が勢いよく靡く。
雲の流れが速い。



「…風邪引くぞ」

「…わっ」



さっきまで寝ていた紘が、ブレザーをあたしにかけてくれた。
…優しい。
そんな紘に少しドキッとしてしまった。



「紘は寒くないの?」

「俺はいいんだよ」

「…ありがとう」



何だろう、この感じ。
いつもは紘と2人でいても、こんなにドキドキしたりしないのに…
今日のあたしは少し変だ。


隣に座る紘の方を見る。
短い茶髪。
キリッした目。
薄い唇。
シュッとした顎。
逞しい身体。


今時の男子と比べると、紘は男らしいかもしれない。
そんな紘がカッコよく見えて、またドキッとする。



「…美稀?」

「…わっ!」



急に紘が振り向くから、顔が近い!
…どうしよう、顔赤いかも!



「…さっきから、なんだよ」

「…へ?」

「俺の方ばっか見て」



…あちゃー。
やっぱり、バレてたか。
急に恥ずかしくなる。



「そ、その…寒いなぁって!」


…あたし、何言ってるんだろ。
「寒いんなら、教室戻れよ」って絶対言われるよね…
なんでこんな変なこと言っちゃったんだろ…