「あたしが悪いのに、打つかっちゃったお詫びにって貰ったの」

「…ふーん。ま、いっか」



紘は先輩の情報はどうでもよかったみたいで、そそくさと食べ始める。

あたしもお弁当を広げる。
…あ、理乃と颯人も呼べばよかったなぁ。
ピクニック気分が味わえたのに。
…そういえば、あのこと聞くの忘れてた。



「…紘、聞いてもいい?」

「…ん?」

「…殴ろうとしてた理由」

「…あー、それか」



紘は食べていた手を止めた。
あたしも食べるのを止めて紘の方を向く。



「…殴ったり怒鳴ったりするのはよくないよ」

「…殴ってはねぇよ」

「そうだけど…」

「…言いたくねぇ」

「…どうして?あたしに言えないようなことなの?」



すると、紘は黙り込んでしまった。
…お願い、教えてよ。
いくら幼馴染みでも分からないことはいっぱいある。
言葉にしてくれなきゃ分からないよ…



「隠し事はなしって約束したでしょ?」

「…昔の話だろ」

「今もずっとだよ」

「…分かったよ」



紘は昔、小さい頃にした約束を思い出したのか諦めたみたい。
あのとき約束しておいてよかった!

隠し事はなし。
お互い助け合う。
ずっと一緒。


これがあたしたち4人組の約束。
みんな、忘れてないよね…?



「…あいつがムカついたんだよ」

「どうして?」

「…美稀のこと、軽々しく狙うとか言ったから」

「えっ…」



紘は恥ずかしそうに腕で顔を隠した。
…そうだったんだ。
…やっぱり、紘って優しいね。



「ありがとう、紘」

「…おぅ」



あたしは嬉しかった。
紘があたしを守ってくれたから。
…覚えてる?
小さい頃に、あたしに言った言葉。


『…美稀は僕が守るから』


あたしは、ずっと覚えてるよ……