急いで購買に行くと、既にたくさんの生徒たちで賑わっていた。
…どうしよう、まだ焼きそばパンあるかな?
あたしはキョロキョロと辺りを見回した。



「…きゃっ!」


すると、突然誰かに打つかって倒れてしまった。



「…すみません!」

「…えっ?」



顔を上げると、そこにはカッコよくてモデルみたいな男子が立っていた。
…誰だろう、この人?



「大丈夫ですか?」

「…あっ、はい!あたしの不注意で…すみません……」

「俺なら平気だよ。…立てる?」

「あっ…。ありがとうございます!」



優しいこの人は、あたしを立たせてくれた。
…あれ?いつの間にか人が集まってる。
女子たちはキャーキャー騒いでるし、男子たちもあたしたちのことを見てる。
…そんなに大胆に転んでたかな?



「…あっ!パン!」



あたしは目の前にあるパン売り場を見ると、完売という貼り紙が。
…そんなぁ。
…ごめんね、紘。



「…もしかして買いそびれちゃった?」

「えっ!?…はい。友達の分なんですけど…」



さっきの優しい人が、あたしに近づいてきた。
そして、持っていた袋からパンをいくつか取り出した。



「打つかってしまったお詫びにどれか好きなパンをあげるよ」

「えっ!?違うんです!打つかったのはあたしのせいで…!」

「いや、気付けなかった俺も悪いから。遠慮しないで?」



…すごく優しい。
こんなに優しい人が世の中にいるんだなぁ。
…あっ!焼きそばパン!!
これはお言葉に甘えるしかないよね!



「…それじゃあ、焼きそばパンをもらってもいいですか?」

「いいよ。…好きなの?」

「はい。友達が」

「君は友達思いなんだね。…あ、俺は倉持 春輝」

「綾瀬 美稀です」



…あれ?今、倉持 春輝って言った?
どこかで聞いたことあるような…