「お待たせーっ」
春にふさわしい満開の桜。
暖かい風があたしの横を吹き抜ける。
今日からあたし 船井 鈴 は高校生になる。
新品の制服を身にまとい
桜の木の前で立っている幼馴染みのもとへ向かう。
「鈴」
そうあたしの名前を呼んだのは
小さい頃からよく遊んでいた幼馴染みの 爽 だ。
実家がお隣さんで、一人暮らしを始めてからも
知り合いの家で1番近いご近所さんだ。
「ごめーん!遅くなっちゃって。用意に時間かかっててさー」
「いいよ、俺も今来たとこ。行こう」
爽はいつも優しい。
中学の頃も待ち合わせに遅れて 爽をよく待たせてしまうことがあったが
毎回「俺も今来たとこ」と言って気を使ってくれる。
だから今日も少し待たせちゃったかな・・・・・
新しく始まる学校生活。
張り切ってメイクしてみたり、春休み中に肩まで切った髪の毛を整えていたりと、用意に時間がかかってしまった。
「どうかした?」
「え?あ・・・ううん。ごめん、行こっか」