「ただいまー」
いつも出迎えてくれる裕介の姿がなくて、急いでキッチンの方に向かうと、母親に聞く。
「裕介は?」
「熱を出して今倫子の部屋で寝てるわよ。居間に布団敷いてるあげるからそこで寝るように言ったのに、ママとの布団がいいって聞かなくて」
母親は苦笑いしながら言ったけど、私の胸はズキンと痛んだ。
病気のときは母親がいないと不安で仕方ないのに……。
今の私は一緒にいてあげることすらできない。
私は急いで部屋に行き、アイス枕をして眠る裕介の髪をなでる。
今日は寝ないで看病するからね……。
私は一晩中裕介を看病する。
シュウにどんどん似てくる裕介は、シュウとの昔の思い出をよみがえらせた。
シュウの母親に対しての冷めた言葉。
シュウが紐をしていた女に刺されたこと。
ヒデキのこと。
車椅子の女。
シュウに似た裕介の顔が、同じ道を歩かせるなって言ってる。
裕介が気に入って、私を想ってくれる人が現れたら、私は迷わず飛び込もう。
片瀬くんに言ったようなことはもう言わないで、裕介の父親になってくれる人を探そう。
自分の存在さえ知らない父親の姿を追い求めるより、ずっといいに決まってる……。