エレベーターを降りて、マンションを出ると三上さんがタバコを吸いながら待っていて、私を見付けると急ぎ足で来る。
「どうなった?」
私は黙ったまま、首を横に振った。
シュウと別れたことを言いたくなくて。
声に出すと涙が止まらなくなりそうだったから……。
「とりあえず、うちに行こうか……?」
私がコクリとうなずくと、三上さんはタクシーを止め、一緒に乗ると三上さんの家に向かう。
シュウ……元気でね。
頭の中で呟いて、シュウのマンションが見えなくなるまで見続けた。
もうあそこに行くことはない……。
三上さんのマンションに着き、一緒に部屋に向かう。
タクシーの中にいるときから、三上さんはなにも聞かないでいてくれて、その気持ちに感謝した。
部屋に入ると三上さんはスーツをスーツケースにしまい、私に言う。
「じゃあ、俺行くからなにかあったら電話して?」
「……えっ?」
「あんなこと言ったけど、今日は一緒にいない方がいいと思うんだ。寂しいときに男にすがると、神田さんが後で後悔するよ。俺はしないけどね」
三上さんはそう言って笑うと、部屋から出ていった。
ひとり部屋に残された私は、捨てられた犬みたいに寂しくなった。