もう、なにを言ってもシュウの決心は変わらない気がした。


私はシュウに渡された携帯を強く握りしめて、玄関に向かう。


この部屋を出たら、シュウと私はただの他人になってしまう。


シュウと出逢う前のように……。


私はゆっくり靴を履くと、シュウに言った。



「シュウ……今までありがとう」



それしか言葉が見付からなかった。


シュウはゆっくり私の方に来て、苦しい程強く抱きしめて言った。



「ごめん……」



言葉が出ない。


しばらくそのままでいると、シュウは離れて玄関を開けて言った。



「元気でね」



「シュウも……元気でね」



シュウは私を優しく押し出して、玄関を閉める。


私はゆっくりと、エレベーターの方に向かって歩き出した。


なんて呆気ないんだろう……。


何年も好きで。


一緒に頑張ってきたのに。


たったの一日で終わってしまうんだ。


シュウと積み重ねてきた毎日も、終わるときはアッと言う間で……。


信じられない。


シュウは私と一緒にいて幸せだった?


私は幸せだったよ……。


なんでこんなになったのかな?


昨日あのままここにいれば終わらなかった?


ううん。


それだけの縁だったんだね……。


きっと。