「……俺さ、お袋が殆ど家にいなくてずっとひとりだったんだ。家を出て転々としてた。でも、親父や倫子さんのお陰で変われた気がする。だから力になってやりたい」


「でも……シュウの弟じゃないかもしれないんだよ?」


「うん。そうかもしれない。でも俺を頼ってる以上放っとけないよ」


「……」



シュウは独りの寂しさを知ってるから?


でも危険過ぎる。



「倫子さん」



シュウの力強い目が痛い。



「あのね、シュウ。私初めてじゃないんだ。ヒデキと会うの」


「え?」



「紗香の家に行ったとき、声掛けられた。私の名前もシュウのことも知ってた。……それに、携帯番号教えてないのに、電話が掛かってきたんだよ?」



私がそう言うと、シュウは少し考えてから口を開いた。



「俺、調べてみるよ。ヒデキが誰なのか分かるまで、泊めてもいい?倫子さんには指一本触れさせないから」


「……絶対?」


「うん、絶対」



シュウの“絶対”の言葉を聞くと、大丈夫な気がした。



「でも私……優しくできないから。ヒデキのこと」


「うん。ありがとう、倫子さん」



シュウと私はヒデキのいる部屋に戻る。