「兄さんって言っても、会ったことないから俺の事知らないよね」
「うん」
「高山優香。俺の母親だよ」
「……」
シュウはその言葉を聞くと、少し黙り込んだ。
ヒデキは私のことなんて一切見ない。
シュウとヒデキは異父兄弟なの……?
でも、なんかしっくりこないんだ。
私に掛けて来た電話。
悪意を感じない訳がない。
「ここじゃなんだから、部屋に行って話そう。いいよね?倫子さん」
「……うん」
ヒデキはその言葉を聞くと嬉しそうに笑って言った。
「よかった。俺、追い返されるかと思ったよ」
シュウは複雑そうな顔をして、私は胸がモヤモヤして、ヒデキだけが嬉しそうな顔をしてシュウの部屋に向かう。
部屋に入るとヒデキが言った。
「へぇー、いいところに住んでんだね。同じ母親なのに、俺とは比べ物にならないくらい、いい生活してるんだ?」
「……」
シュウは冷蔵庫からジュースを出し、ヒデキに渡すと言った。
「なんで急にここに来たの?」
「俺、産まれてすぐに施設に預けられたから、二年前に聞いた母親の名前しか知らなくて。テレビで高山秀明のことは知ってたけど、少し前に兄さんだって分かって、会いたくて探したんだ」