「ただいま…」



母親が父親に何て言ったのか分からなくて、私はドキドキしながら玄関を開けて家の中に入る。



「楽しかったか?」



父親の言葉に少し戸惑いながら、私は答えた。



「…うん。楽しかったよ」


「そうか。今度うちにも連れて来なさい」


「……」



連れて来たら、きっと凄い勢いで怒るんだろうな。


母親の顔をチラッと見ると、母親は舌を出して笑った。



「そうだ。私、明日から職安行くね」



私がそう言うと父親は嬉しそうな顔をして言う。



「そうか。やっぱりこっちに戻って正解だったな」


「そう?」


「後は倫子が見合いで…」



私は父親の言葉を切るように言う。



「私、ご飯いらないから。お風呂入って寝るね」


「話しは最後迄聞きなさい!」


「はぁ~い。お父さん」



そう言って私はお風呂へと向かう。



「もういいじゃない。倫子もすっかり元気になって。カウンセリングも、もう必要無いわね」


「…そうだな」



両親の話し声を聞いてると、何だか嬉しくなった。


私を大切にしてくれている両親。



もう悲しませるような事はしない。