「倫子さん、お風呂沸いたよ」
「やっぱりシュウが先に入って」
「何で?」
「女の子のお風呂は長いから、シュウが先に入った方がいいと思って」
「女の子って年じゃないと思うけど」
シュウは昔と変わらず余計な一言を言って、浴室に行く。
「相変わらずなんだから…」
私はそう呟いて腕時計を外した。
腕時計を外すと、くっきりと残ってしまった傷痕が目に入る。
どうやって隠しきろう?
その事で頭がいっぱいだ。
この傷をシュウが見たら、嫌われるかもしれない…。
会うだけなら見られないで済むけど、寝る時まで腕時計をしている訳にはいかない。
必死に考えている内に浴室が開く音が聞こえて、私は慌てて腕時計を嵌めた。
「倫子さん、お風呂あいたよ?」
「うん。じゃあ入って来るね」
私は持って来た鞄から着替えを出し、浴室に向かう。
浴室に入ると先に全部服を脱ぎ、最後に腕時計を外した。
今日はどうにか隠して、明日もシュウより早く起きなきゃ…。
そんな事ばかりを考えながらお風呂から上がると、部屋の明かりを真っ暗にして、テレビだけがついているシュウの部屋にホッとした。