母親が待つタクシーに向かう途中、シュウとの思い出がフラッシュバックのように浮かぶ。
温かい手も
シュウの声も
何も変わってなくて
シュウと会えなかった日々が無かったみたいに、あの時のままのシュウにホッとした。
シュウと音信不通になっていた時間を知りたくて、私は聞く。
「ねぇ、シュウ。今までどうしてたの?」
「……」
少し硬くなったシュウの表情に不安になったけど、シュウは少し笑って答えた。
「別に。勉強ばっかりしてたよ。倫子さんは?」
聞かれた瞬間、胸がズキンと痛んだ。
私の手首の傷……。
『シュウとの事が苦しくて、死のうとしました』
言える訳がない。
「…私も。でも体調がずっと悪くて、会社辞めちゃったんだ」
「そうなんだ?倫子さん、痩せたよね」
「ダイエット、頑張り過ぎたみたい」
「大丈夫。倫子さんならすぐに太るよ」
「ひっどーい!」
シュウと私はそう言って笑ったけど、私は心から笑えなかった。
何てバカな事をしちゃってたんだろう……。