***














20分して、ようやく直昭さんの部屋まで
来れた。






廊下はシンとしていて、誰もいないみたいだ。








コンコンとドアをたたいたら
すぐハイと、声がした。




「あの、直昭さん。私です。」




ガチャっと音がして横開のドアが開いた。


「蓮花。どしたの。」


「は、羽織を返しに。すみません……、
私借りっぱなしで。直昭さんだって寒いのに。」




王様に献上するみたいに、丁寧に畳んだ羽織を
両手で渡した。やっぱり顔をあまり上げられない。








「あ、あぁ……ありがとう。」




「こちらこそ。じゃあ、ほんとに次こそ
おやすみなさ……、」

  



パシっと手を引かれた。


「……直昭さ、」



何か言う間もなく手を引かれたまま、彼の部屋に連れて行かれた。






スリッパをきれいに脱ぎきれず散らしたまま、
引きづられるように和室に、
敷かれた布団の上まで連れられた。


振り払うように布団の上に投げ出され、
彼が言った。


「なんで目を合わしてくれないんですか。」