促され、私は顔を上げないまま頷いた。
直昭さんは先だって歩き出した。
急にどきどきして。
前は普通に直昭さんに接することが出来たのに
こうして後ろ姿を眺めている事だけで
私はこのひとが好きなんだと実感してしまう。
心臓が鳴っていて、
その音は触れなければ分からない。
けれど
いまは………心臓だけじゃなくて。
身体中で感じる。
名前を呼ばれたら、声に反応して。
触れられたら、体が火照って。
見つめられたら、頭の中まで見られている気がして。
触れられたら、止まらない気がして。
怖い。
「じゃあ、おやすみなさい。」
直昭さんに部屋まで送って貰った。
「…………おやすみなさい。
送ってくれて、ありがとうございます」
まともに顔を上げられないまま、私はお礼を言ったら
「うん。」
ぱたぱたと彼のスリッパの音が離れていって
ようやく顔を上げることが出来た。