当たり前だと言われても。
中々ぴんとこない。
親父は花なんか母に贈った事はないのだから。
親父はまぁ、優しく真面目な人だ。
口数が少ない事をのぞけばだが……。
俺が声優になりたい、と言った時は反対された。
ーそんな不安定な仕事なんかやめろ。
大体お前なんかがなれるのか?
今は懐かしい思い出だが、
当時は母が間に入ってくれて、
どうにか収まった覚えがある。
俺も気が強かったのだ。
「『あんたには言わなかったけど、
母さんが少し前に倒れちゃって、
父さんがかなり心配しちゃったのよ。
……だからそれの回復祝いも兼ねてね。』」
「なにそれ。聞いてな…」
「『だーから、あんたに言わなかったって
前置きしたでしょう。馬鹿。
仕事があるから直には
言うなって、母さんに言われたのよ。
私は言いたかったけど
母さん、直の仕事応援してるから。全く』」