そんな日々を繰り返しながら、春を超え、打撲の痛みが消え、歩くことはまだ難しいままだったけど、「そろそろ学校に行きたいなぁ…」なんて、気持ちの面に余裕が出てきた夏の始まり頃のある夜。


トントン


その日はいつもより若干遅い時間にノックの音が聞こえて、いつにも増してユニフォームを真っ黒にした海斗がやってきた。


「よ」

「よ!」

「今日は泣いてねーんだな」

「なっ、失礼な!最近は泣いてないじゃんっ」

「俺のいねーとこで泣いたりしてねーだろうな」

「えっ」

「なんだよ…泣いてんのか?」

「うっううん、泣いてない」

「なら良し。」

「もしかして…」

「ん?」

「大会、近い?」

「え」

「いや、なんか今日いつにも増してユニフォーム汚れてるし」

「あ、まぁ…来週」

「そっかぁ!出れそ?」

「レギュラーじゃねーけど、背番号もらった」

「そうなの!?凄いじゃん!」

「……わり…」

「え、何で?」

「……。」

「…あ〜、なるほどね」

「?」