龍くんの背中に向かってそう声をかけると、龍くんがぴたりと立ち止まった。
「おまえ、猫みたいだから」
……はい?
ね、猫ですか…?
「俺のことなんかすぐ忘れて、気ままに誰か他のやつになつきそう」
そう言って、またさっさと歩き始める龍くん。
その後ろ姿をそっと見つめる。
出会った頃よりさらに広くたくましくなった龍くんの背中。
あたしが、諒ちゃんみたいな体型が好き、なんて嘘ついただけでトレーニングまでしてくれるなんて...
いま、龍くんはどんな顔をしているんだろう。
きゅうんと胸が締め付けられる思いがした。
ぱっと手を離し、龍くんの背中に思い切り抱きつく。